ハサミムシ(№609)

 春の草花の準備のために植木鉢を動かすと、その下にハサミムシが潜んでいました。ハサミムシ目オオハサミムシ科の昆虫です。ハマベハサミムシともいわれ、ハサミムシの仲間で翅のない種類です。尾端に動かすことのできる1対のハサミ(尾鋏)を持っています。このハサミはゴキブリなどが持つ尾毛が発達したもので、尾毛を持つ昆虫は比較的原始的な部類に入ると言われています。
 ハサミムシの特徴的な尾鋏は外敵から身を守るための武器であり、闘争や、捕食の際にも使われます。オスの尾鋏は左右非対称で一方は極端に曲がっていますが、メスでは左右対称で比較的すんなりしています。この仲間は国内には20~30種が生存し、翅のある種が多く、その後翅は全開時の1/15ぐらいの大きさに畳込まれ前翅の下に格納されています。
 早春に産卵し、産卵したメスは約40日間にわたる卵期間中、餌を摂らずに
卵の世話をし、孵化した幼虫は1,2令期の間、このメス親を食べて育ち3令期以降独立分散します。蛹の期間の無い不完全変態で雑食性ですが肉食が多く、夜行性で夜間に小昆虫などをとらえて食べています。人間に危害を加えることはなく、害虫を捕食する益虫とも見られますが、不快害虫扱いされることもあります。
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▲メス成虫
▲メス成虫

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アラカシとシラカシ(№608)

 山中、街路、公園、家庭の庭まで広く見られる樹木の代表にアラカシ、シラカシがあります。照葉樹林帯を形成する常緑広葉樹です。ブナ科コナラ属の高木で樹高は20mぐらいになります。日本では東北地方南部以南に分布します。材は堅く、かつては槍の柄や木刀、農具の柄などに使われました。この2種類はどこにでもある樹木ですが、区別するのはなかなかむつかしいと言われています。今回はこの2種を見分ける方法について解説しましょう。
 果実では殻斗(どんぐりの帽子)が両種とも横縞模様ですがアラカシでは被りが浅く、シラカシではやや深い傾向にあります。確実な区別点はシラカシのドングリ先端(メシベの柱頭部分)は段丘上に盛り上がり、細かい毛があることです。樹全体の外観はアラカシがシラカシに比べて荒々しく、シラカシは優しく見えますがこれは見る人の感性にもよります。一般的には、葉縁の鋸歯(葉の周辺のギザギザ)がアラカシは葉先の1/2~2/3、シラカシは2/3~全体にあり、鋸歯先端はアラカシではとがり、シラカシでは穏やかです。また、葉の幅はアラカシが広く、シラカシが細いのも特徴になります。葉の中肋に沿って縦に割いてみると、アラカシではきれいな階段状に、シラカシではガタガタに割けるのも特徴のようです。
 常緑樹として庭木にする場合、私は全体に優しいシラカシの方が好みですが如何でしょうか。
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▲アラカシ
▲シラカシ
▲ドングリ 左:アラカシ、右:シラカシ
▲葉 左:アラカシ、右:シラカシ
▲アラカシの葉
▲シラカシの葉

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ヒメスギカミキリ(№607)

 針葉樹を春から初夏に伐採し、放置すると決まって産卵にやってくるのがこのヒメスギカミキリです。成虫は体長5~14mmの中型カミキリムシで、前胸背は黒色、メスの上翅は赤褐色、オスの上翅は赤褐~青藍色まで変化に富みます。オスの触角は上翅の端より長いのが特徴です。国内では全国に分布しています。
 初夏に伐採された針葉樹の樹皮下に産卵するため、伐採後に樹皮をはがすと被害を免れることができます。そのまま放置すると、ヒメスギカミキリがやってきて産卵し、蛆虫状の幼虫が樹皮下を穿孔食害します。坑道には木屑が充満し、夏には樹皮下から材の内部へ侵入し、蛹室を作って蛹化します。9~10月には蛹室の中で羽化し、成虫になってそのまま冬を越し、翌年4~7月頃に外部へ出てきます。
 森林害虫とされますが、伐採時期を夏以降にすればほとんど被害は見られません。しかし、春から初夏に伐採された木材を建築資材として利用すると、建築後に柱からヒメスギカミキリが出現することがあります。
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▲表皮をはいでみる
▲木屑を取り除いた(坑道)食痕
▲メス成虫
▲オス成虫

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