オオムラサキ(№217)

 ご存知のようにオオムラサキは日本の国蝶です。北海道から鹿児島まで分布する蝶で大型(翅の開長90mmほど)のタテハチョウの仲間です。エサはエノキ(北海道ではエゾエノキ)の葉です。エノキは落葉樹で冬期間は葉がありません。この間オオムラサキの幼虫は地上に落ちたエノキの葉にしがみついて冬の木枯らしに耐えています。春、エノキの芽が芽吹く頃、幼虫はエノキの幹を這い登り新芽を捜して自分の居所を定めます。これを座と呼んでいますが、この場所から新葉を求めて歩き回り、食後はまた座へ戻る生活を送ります。数回の脱皮後、蛹となり、成虫となって、樹液を吸いながらエノキに産卵して一生を終えます。
 大きくて、どっしり構えているように見えますが、幼虫の飼育はなかなか難しく、特に休眠覚醒期(休眠を終わって活動を始める時期)の幼虫が最初の座を作るときが最もデリケートなようです。
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▲越冬幼虫
▲中令幼虫
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▲終令幼虫
▲蛹(垂蛹ー尾端をくっつけ頭部を下にぶら下がっている)
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▲成虫(標本)

キリウジガガンボ(№219)

 田植えシーズンが近づくと、草むらに大きな蚊のような昆虫が見られるようになります。
 これは蚊の仲間ではなく、ハエの仲間のキリウジガガンボといいます。カトンボ、アシナガトンボ、イネノネキリムシなどと呼ばれることもあります。体長14~18mm、翅の長さ20mmほどの大きな昆虫で、灯火に集まりやすく、夜間窓を開けていると室内に飛び込んでくることもあります。大きな蚊のように見えますが決して人の血をすったり刺したりはしません。
 かつて、稲が水苗代で育苗されていた頃は、イネの幼芽、幼根を食害する大害虫でしたが、箱育苗(機械植え用の育苗)が普及するに従って害虫の座から退いた昆虫です。ただ、現在でも湛水直播される場合は防除が必要なようです。
幼虫は、うじ虫型で体を半分に切ったように見えるためキリウジと呼ばれます。湿地に産卵し、幼虫は水中で腐った植物や植物の新芽、幼根を食べて育ちます。
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キリウジガガンボ
◀交尾中のキリウジガガンボ

シロバナタンポポ(№218)

 4月になるとあちらこちらでタンポポの便りを耳にするようになります。タンポポには、大きく分けると在来タンポポ(近畿ではカンサイタンポポ)と外来種のセイヨウタンポポがあります。カンサイタンポポは、総苞外片(花の一番外側にありガクや花弁を包み込んでいたもの)の先がまっすぐ立ち上がっていますが、セイヨウタンポポではこれが外側へ反り返っているのが大きな特徴です。ところが、最近は総苞外片が中途半端に反ったものも見られ、遺伝子解析すると、多数の雑種が見られるそうで、純粋なカンサイタンポポやセイヨウタンポポは非常に少なくなっているそうです。カンサイタンポポとセイヨウタンポポを比較すると、カンサイタンポポ{( )内はセイヨウタンポポ}は ①総苞外片の先はまっすぐ(外へ反り返る) ②開花期は春季のみ(ほぼ一年中) ③両性生殖である(単為生殖する) ④種子生産量は普通(多数) などの違いが見られます。
 さて、よく通る団地の一角に白い花弁のタンポポを見つけました。付近に10株程度が見られます。これは在来タンポポの一種でシロバナタンポポと呼ばれているものです。近畿にはタンポポの仲間は14種類ほどあるそうで、その中の一つです。
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▲シロバナタンポポとセイヨウタンポポ
▲セイヨウタンポポ、カンサイタンポポとシロバナタンポポ