フタリシズカ(№443)

 入梅のころ、里山の渓流沿いで、草丈30~50cm、茎の先端に長さ5~10㎝程度の花穂を1~5本(大部分は2本)直立させた植物の群落を見つけました。花は直径3mm程度の白い小花で花穂に並んでついています。葉は比較的大きく、長さ7~15㎝で互生についています。
 これはフタリシズカと呼ばれる山野草で、花穂が2本のものが多いため、能の「二人静」(静御前とその亡霊の舞)になぞらえて付けられたそうです。この花には花弁がなく、白く見えるのは3本の花糸(雄しべ)が肥大し内側へ巻き込んだものです。巻き込んだ内側を見ると、両側の雄しべに葯(花粉袋)が1個ずつ、中央の雄しべに2個、合わせて4個の葯が見られ、雌しべを抱き込んでいます。このような構造の花はアリやスリップスのような小さな昆虫が花粉を媒介しているのでしょうが、果実の付き具合からすると、花数の割に果実が少なく受粉効率は良くないように見えます。しかしこの植物は果実ができるころには、茎の中ほどに閉鎖花を作り自家受粉で果実を作りますし、地下茎でも増え群落を作ります。種子はエライオゾームを持っており、アリが種子散布をするようです。
 同じセンリョウ科にヒトリシズカと呼ばれる山野草がありますが、こちらは葉が出る前に開花し、開花時期も1か月以上早く、花も雄しべが管状になるなどかなり様子が異なります。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲開花中のフタリシズカ群落
▲フタリシズカの花(内側に葯が見える)
▲フタリシズカの花(4個の葯と柱頭が見える)
▲果実が熟すと下に垂れる
▲下部の節から出た閉鎖花

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