ミョウガ(№.486)

 晩夏から食卓には時々香辛料としてミョウガが添えられることがあります。和食には欠かせない食材の一つと言えるでしょう。
ミョウガはショウガ科ショウガ属の多年草で、里山の半日蔭地に自生しています。しかし、人里近くにしか存在せず、ミョウガそのものは5倍体(染色体組が5組存在し、正常な減数分裂ができないため種子を作れない)であるため、自生種ではなく人為的に導入栽培されてきたものと考えられています。
 草丈40~100㎝で蕾や、若芽を食用に利用してきました。繁殖は地下茎による栄養繁殖で、多年草ですが野外では夏から秋に花が咲きます。下の写真のように、薄暗い藪の中をかき分けると、少し黄色みを帯びた3㎝程度の白い花を見ることができます。花の中央には長いメシベとその基部に黄白色の葯(花粉を入れた袋)が見られますが、5倍体のため通常は種子はできません。一つの蕾からは3~12個の花が次々に咲きます。この蕾をミョウガ(ハナミョウガ)として利用し、春には軟白化した若芽をミョウガタケとして利用します。
 ミョウガの芳香成分はα(アルファ)ピネン、辛み成分はカンフェン、ゲラニオール、ミョウガジアールなどが知られています。これらの成分は食欲増進、抗菌、鎮静などの効果があるそうです。ところで、ミョウガは食べすぎると馬鹿になるといわれることがありますが、これは釈迦の弟子にまつわる言い伝えや落語からきているもので全くそのようなことはありません。しかし、肝蛭(カンテツ)と呼ばれる寄生虫がミョウガを通して人に移ることがあるそうです。ただし、肝蛭は家畜(ヒツジ、牛、豚)の寄生虫で、この卵が非常にまれですがミョウガを通して人の口に入ることがあるようです。秋になると、ミョウガの自生地でイノシシが食べ荒らした跡を見ることがありますが、このようなところのミョウガの蕾は危ないのかもしれません。
 最近、スーパーなどでは花ミョウガを年中見ることができますが、これは主として高知県でハウス栽培されているもので、草丈2m以上に成長したミョウガが栽培されています(最下段左写真)。
 自生地ではよく似た植物にヤブミョウガがあります。これはツユクサ科ヤブミョウガ属の植物で秋口に茎の先に白い花を穂状につけるため区別できます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲藪に広がるミョウガ
▲地下茎の先にできるミョウガの蕾
▲ミョウガの花
▲イノシシに荒らされたミョウガ
▲ミョウガのハウス栽培(高知県)
▲ヤブミョウガ

homeへ


ページトップへ