イチジク(№488)

 夏も終わりに近づくと、果物屋さんの店頭にイチジクが並びます。イチジクは漢字で無花果と書かれ、花のない果実と思われていますが、実はちゃんとした花を咲かせています。
 少し高めの畝を立て、その間に水を溜められるようにした果樹園で、地上20㎝程度の高さで左右に幹を1本延ばした形(コルドン仕立て)で栽培されているのがイチジクです。水を好み、その年に伸びた枝の葉腋(葉の付け根)に下から上へ順に実をつけていきます。日本へは天草を通じてポルトガルから導入されたそうで、葉は大きく、3裂したものと5裂したものがありますが、前者は江戸時代に、後者は明治時代に導入された品種です。
 さてイチジクでは、実ができる前の花は見えませんが、実を半分に切ってみると、中央の空洞に向かって周囲から無数の突起が出ているのが見えます。この突起の一つ一つが花で、周囲の白い部分は花托と呼ばれ主として食用になる部分です。このような外から見えない花の集まりは陰頭花序と呼ばれます。
 この花はもともと虫媒花(昆虫が花粉を媒介する)ですので、昆虫が出入りする穴が実の先端に空いています。ただし、イチジクの花粉を媒介する昆虫であるイチジクコバチは日本にはいません。日本で食用に栽培されているイチジクは単為結果性の品種で受粉しなくても実が太る品種ですので、実の中でイチジクコバチが受粉活動をしているようなことはありません。ただイチジクの仲間のイヌビワではイヌビワコバチが受粉活動を行っており、実の中にコバチがいます。このことはまた別の機会に紹介しましょう。
 イチジクの枝や葉を切ると白い汁液が出ますが、この中にはフィシンと呼ばれるたんぱく質消化酵素が含まれており、大量の汁液に触れ続けると指がつるつるになるそうです。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲コルドン仕立てのイチジク
▲イチジクの果実(葉腋に下から順に付く)
▲イチジクの果実
▲半分に切ったイチジク(多数の花が中央に向かって付く)
▲イチジクの種子?がみえます
▲イチジク果実先端の穴

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