(仮称)ウメシロヒメヨコバイ(№491)=モモヒメヨコバイ

 農林水産省の行う発生予察事業の一環として各都道府県は農作物の病害虫に関する発生情報を農業関係者等に向けて発信しております。この中に昨年末から本年にかけて6県(和歌山、徳島、埼玉、京都、大阪、群馬)から特殊報または注意報として出された害虫がいます。それは主としてウメで見つけられたヒメヨコバイの1種(Singapora shinshana、和名はありませんが京都ではウメシロヒメヨコバイと仮称しています)です。農作物のウメで初めて発生が認められた害虫です。
 体長3~3.5mm、全体は薄い黄緑色をしており、黒い複眼が目立ちます。さらに頭頂部には複眼同様の黒点が一つ見られます。ウメ、モモを加害しますが他にスモモ、ナシ、リンゴ、サンザシ、ポポー、ポプラを加害するようです。成虫、幼虫ともに葉の裏から吸汁し、被害葉はカスリ状に細かい斑点が多数でき、ひどくなると遠目に葉が白っぽく見えます。さらに被害が進むと落葉します。葉の裏には多数の脱皮殻が残ります。発生のひどい木に近寄ると、多数の成虫が飛びまわります。
 さて、関西在住で庭にウメ(ハナウメ等を含む)、モモ(花桃、ほうきモモ等を含む)、スモモなどを植えておられる方は、「この虫はもう10年ほど前から毎年出て困っている。」とおっしゃる方もおられるのではないでしょうか。この害虫に薬を撒いてほしい、虫が多いのでウメを切ってほしいと依頼されたりしたことが何軒かあったことを思い出します。比較的農薬には弱く薬剤散布するとしばらくは鳴りを潜めましたが次の年には復活していました。害虫名がわからずあちらこちらで聞いてみましたがわからないままに今日まで来てしまいました。農家が栽培するウメでは年間何度かの殺虫剤が散布され、問題になるほどの発生がみられなかったのでしょう。
 今後和名も付けられ、防除法も確立されることと思いますが庭木の害虫となるとなかなか研究が進まないことを実感いたしました。
 本害虫は過去にヒメヨコバイSP(№238)として紹介したものと同一害虫です。

 本害虫は2021年に和名モモヒメヨコバイ(植物防疫75巻)と決められました。
(*画像をクリックすると拡大されます)

▲被害を受け白くなったモモの葉
▲葉裏の脱皮殻
▲葉表にとまる成虫
▲成虫(頭頂部に黒点)

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