コクラン(№518)

 6月中頃、薄暗い常緑樹の林内で人知れずひっそりと咲く地味なランがあります。コクランです。林内で咲き、花の色も暗柴褐色で目立たず、1花茎に咲く花も1㎝程度の小さい花が3~10花と少ないため咲いていても目立たず、山歩きの好きな人も気が付くことが少ないランです。
 ラン科クモキリソウ属の常緑性ランで、葉は長さ5~12㎝程度で年に2~3枚を出します。この葉は2年にわたって残り、葉が枯れた後には偽球茎と呼ばれる緑色、円筒形の棒上の茎が地上に直立して残ります。葉の間から10~25cm程度の花茎を伸ばし花を付けますが、花弁は翼弁以外は細長く、突き出た蕊柱(めしべおしべが癒合し柱状になったもの)が目立ち、先端に花粉塊(花粉袋が集まったもの)を載せています。細長い花弁がクモの足に見えることからクモキリソウ属と分類されるとの説もあります。花の後の果実は先の太い棒状で花より目立ちます。
 この果実の中に、種子ができますが種子自身には成長に必要な栄養をほとんど貯蔵していないため、生育には菌根菌との共生が必要となります。種子の長さは0.3~0.5mmと非常に小さく、風が吹くと花粉が飛び出すように飛散するのが見られます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲果実をつけたコクラン
▲花をつけたコクラン
▲コクランの花
▲風で飛散するコクランの種子
▲コクランの種子(上端のスケールは1㎜)

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