ノアザミ(№550)

 アザミは秋の花ですが、ノアザミは5月ごろから咲き始め秋まで咲き続けることもあります。キク科アザミ属の多年草で、花は赤紫~淡紅色、稀に白花もあります。筒状花のみが集まり直径4~5cmの花序を上向きに咲かせ、総苞片はねばねばしています。草丈は60~100cmで、深く切れ込んだ葉先には鋭いとげが見られますが、これは草食獣から身を守るためと言われています。本州、四国、九州の山野、草原、河川敷、畦畔などの日当たりの良い場所に多く見られます。
 それぞれの筒状花は花序の外側から内側へ順に開花していきますが、この花はそれぞれが雄性先熟(まず花粉を出し、のちに雌しべが熟します)で、花粉は合着した雄しべ(集約雄蕊)の筒の中を雌しべが上に向かって伸びるときに、雌しべの未熟な柱頭と花柱にくっついて外へ出てきます。外側の筒状花が花粉を出してから中心部の筒状花が花粉を出すまで4~5日の時間差があります。この間のめしべの動きですが、中央の筒状花が花粉を出し終わるまで全てのめしべが、柱頭を閉じたまま待っていることがわかっています。最後の花が花粉を出し終えた翌日に全ての雌しべの柱頭が2つに割れて一斉に受粉可能な状態(雌性期)になります。このような仕組みで同花受粉を避けているのです。
 茎葉、根は食用や生薬に利用され、切り花用に改良されたドイツアザミなどの園芸種もあります。また、日本には100種近いアザミの種類が知られており、それぞれ交雑も容易であることから夏~秋に咲くアザミの分類はむつかしい植物の一つです。なお、ノアザミにも、雄性の退化した株(雌株)の存在が知られるようになりました。また、写真のような帯化株も稀に見られます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲路傍のノアザミ
▲ノアザミの花(濃紫色に見えるのが葯、雄性期)
▲ノアザミの花(花粉を出し切った花序、雌性期)
▲受粉可能な柱頭(2つに割れている)
▲帯化したノアザミの花

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