カシノナガキクイムシ(№554)

 最近、7,8月の広葉樹の雑木林で立ち枯れた木が目立つことがあります。この原因のほとんどがナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)による立ち枯れと言われています。病原菌はナラ菌(ラファエレア菌)が樹体内で繁殖し水の吸い上げが阻害されて枯れるものです。
 それではこのナラ菌はどのようにして樹木内に侵入するのでしょうか。実はこの菌はカシノナガキクイムシと呼ばれる甲虫によって運ばれます。6~7月に新成虫はコナラ属を中心としたブナ科樹木に穿入し、集合フェロモンを出すことで特定の樹木に多数のカシノナガキクイムシが集中的に穿入します(マスアタックとよばれます)。しかしカシノナガキクイムシのエサは樹木ではなく樹木に繁殖した酵母菌類(アンブロシア菌類)と言われ、成虫雌は前胸背面にくぼみ(マイカンギア=菌嚢)を持ち、ここに菌類をため込んで運ぶと言われています。この際、エサとなる菌に加え、ナラ菌をも同時に運び込み樹木を枯死させることになります。ですから、カシノナガキクイムシで穴だらけになりながら、ナラ菌が持ち込まれず枯れずに生き延びることもあるようです。
 カシノナガキクイムシとナラ菌の関係はマツノマダラカミキリとザイセンチュウに似たところがありますね。
 カシノナガキクイムシは、昔から北海道を除いた日本全国に生息しており、ナラ枯れに適した大径木が増加してきたため被害が目立つようになったともいわれています。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲ナラ枯れで立枯れた樹木
▲キクイムシが出した木屑(フラス)(根にまで寄生する)
▲キクイムシ穿入口(ここからフラスを出す)
▲カシノナガキクイムシ雄成虫
▲カシノナガキクイムシ雌成虫(前胸背面に菌嚢=マイカンギア)

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