シャガ(№316)

 冬の寒い時期にもつやのある青々とした葉をしているあやめ科の植物があります。人里近くの、日陰でやや湿ったところに自生しますが、たまに庭園の根占などに使われることもあります。4^5月頃にあやめのような花をつけるシャガです。
 花は白弁と薄青弁のものがあり、濃い紫と黄色の模様をつけたなかなかきれいな花です。花びらはあやめと同じくガクと花弁の区別が出来ないため花被と呼ばれます。葉が目立ちすぎるためか、あるいは草丈が50~60cmと高すぎるためかあまり庭園用としては人気がありません。中国原産の植物ですが、日本では3倍体が導入されたため、種子をつけません(中国では2倍体が存在し種子をつけるそうです)。したがって、日本では自生種を含め、すべて同一の遺伝子を持った個体(クローン)しか存在せず、地下茎で広がるか人為的な拡散以外に広がることが無いため、人里離れた深山で見ることはありません。 ところで、シャガの葉は刀の刃のような形をしていますが、裏表はあるのでしょうか。葉の付け根を見ると中心部を巻き込むようになっているのがわかります。しかし先へ行くと中肋(中心の葉脈)を折り目に葉の表同士がくっついたようになっています。つまり、人の目に触れるシャガの葉はどちらの面をとっても葉の裏だということです。このような構造の葉を単面葉といいます。ところで、シャガの葉はまっすぐ立ち上がらず、必ず一方が上、反対側が下になります。これは、上側と下側の葉での成長が違うために起こるようですが、上側の葉は細胞が均一化されつやがあり葉を保護する働きがあるようで、通常(両面葉)
の葉表の役目をしています。一方、下側の葉の細胞は大小さまざまでつやも無く、葉脈や気孔が多く存在します。つまり下側の葉は葉裏の役目をしているようです。同じ葉裏起源ですが、それぞれの環境(上下)に合わせた適応をしているのでしょう。
(*写真をクリックすると拡大されます)
しゃが1
しゃが花JPG
▲シャガの葉
▲シャガの花
しゃが葉4
▲地下茎で広がるシャガ
▲シャガの葉の基部
しゃが3
▲シャガの葉(左:上面、右:下面)


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