リョウブ(№353)

 落葉樹は冬期間葉を落とすため、幹と枝しか残りません。しかし、この時期にしか見られないものもあります。その一つに冬芽があります。冬芽は冬の寒さを乗り切るためにいろいろな工夫をしています。冬芽を覆うように芽の上にかぶさっているものを芽鱗といいます。また、このような形で冬芽を保護している芽を鱗芽と呼びますが、通常暖かくなると同時にこの芽鱗は剥がれ落ちます。しかし、厳寒期の1月にこの芽鱗を脱いでしまう樹木があります。それは、リョウブです。しかも、芽鱗を脱ぐ際、頂部から剥がれ落ちるのではなく、基部からめくれ上がるような形(傘を開くような形)で剥げ落ちます。芽鱗が落ちた後の冬芽はまるで裸芽(防寒対策の無い冬芽)のような状態で、その後数ヶ月間、寒風にさらされることになります。
 芽鱗の写真を撮っていると、葉痕(葉が落葉した跡)が目に付きました。葉痕には維管束痕(葉と幹をつなぐ養水分の通路である維管束の跡)が見られますが2~3個の維管束痕がサルやヒツジの顔に見えるものが多い中、リョウブには1個の維管束痕しか見えません。
 そのほかに、樹皮が剥がれ落ち幹が鹿の子模様に見えたり、短枝の根元から長枝が伸びる(仮軸分枝)ため、枝の形が鹿の角のように見えるなど枝と幹だけの時期にも、それぞれの樹種ごとの特徴を見ることが出来ます。
(*画像をクリックすると拡大されます)
▲芽鱗を脱ぎつつあるリョウブの冬芽
▲芽鱗を脱ぎ裸芽のように見える冬芽
▲維管束痕は1個
▲幹の皮が剥げ鹿の子模様に見える
▲鹿の角のように見える枝(仮軸分枝)


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